呪われし家に咲く一輪の花/I AM THE PRETTY THING THAT LIVES IN THE HOUSE

主人公のリリーは大変臆病な女性であり、それゆえに家の中をうろつく“何か”の気配が気になってしょうがない。それにアイリスが自分のことを、なぜか繰り返し「ポリー」と呼ぶ理由も知りたい。どうやらそれらの“真実”は、かつてアイリスが発表した怪奇小説「壁の中の淑女」に隠されているようだ。こうしてリリーがおそるおそる「壁の中の淑女」を読み始めるとともに、家にまつわる忌まわしい歴史がフラッシュバックされていく。現在のリリー、若き日のアイリス、そして19世紀に非業の死を遂げた花嫁ポリー・パーソンズ。3つの時代を生きる3人の女性のイメージを錯綜させた映像世界は、緩やかに異なる時空を行き来し、生者と死者の垣根さえも超越していく。
『死霊館』のように派手な幽霊屋敷映画を期待した視聴者は、あまりにものんびりとしたストーリー展開やもったいぶった長回しにイライラするかもしれないが、作り手はそうした批判に耳を貸さないだろう。なぜならこれは前述の通り、他人を恨んで暴れるつもりなどまったくない幽霊が、なぜこの家にとどまり、さまよい続けているのかを探求したアート映画だからだ。いつしか人は幽霊となり、幽霊もまた家とともに朽ち果てていくというそのテーマは、仏教における「この世のすべてははかない」という諸行無常の摂理すら連想させる。
監督:オズ・パーキンス
出演:ルース・ウィルソン、ボブ・バラバン、ルーシー・ボーイントン、ポーラ・プレンティス、ブラッド・ミルン、エリン・ボイズ
脚本:オズ・パーキンス
製作:ロブ・パリス、ロバート・メンジーズ
原題:I AM THE PRETTY THING THAT LIVES IN THE HOUSE
製作年:2016年
製作国:アメリカ、カナダ
時間:89分
【vod】
【hulu】
【ブログランキング】 【Abema】